リカバリープランはどうやればいい 

経営

事業再建の実行に直面するリーダーは多くいると思います。当事者になっても慌てふためかないように、シミュレーションをしておきましょう。

リカバリープランで事業再建の実行

 前々編、「事業再建、経営再建を任されたら」実務編第二弾です。事業総括をして全容が見えたら再建策のプランニングです。ここまでが前編「知らない会社をいきなり任されたら」で述べた部分です。今回はその後の具体的プランづくりと実行編をその中核をなすと思われる「リカバリープラン」をテーマに、仮に明日その当事者となっても対応できるように、その手法について経験則も踏まえて、できるだけ応用が効くように普遍的なものとして提案したいと思います。

[1]リカバリープランを作る

  事業の総括、人心掌握のパートで事業体の課題についてはある意味丸裸になっています。課題が分かれば後は対処療法的に課題に対する解決策を作って行くことになります。課題の会社は販売がジリ貧になり固定費が膨れ上がり赤字になっている事業体がその多くです。これを修正しどういう時間軸でそれを実現して行くかをまとめるのがリカバリープランです。またそれを持って経営陣に稟議決済を仰ぎ、公式承認の下、具体的な実行に移して行くことができます。

1. 事業改革ゴールの設定

 どこにゴールを求めるのか。赤字脱却、ブレークイーブン、完全黒字化、二桁成長、業界No.1等々、リストラのゴールは明確に定める必要があります。それによって目標達成のためには何をどう変えていくかという考え方が徹底できます。改革のゴールを決めてプラン作りの詳細に入ります。

2. 現状分析と課題抽出

 事業の総括でやった会社の外形とそこから得た内実のポイントについて、「会社のアウトライン」としてまとめます。全貌がわかる総評的なものと、定量的に課題が掌握できるPL, BSの分析ポイントを交えて課題の明確にします。

3. 市場トレンドの掌握

 どんな会社も商品・サービスを販売提供する対価として収入を得ていますので、そのビジネスのフィールド、つまり市場に就いての考察がこのパートになります。市場の成長性、他社との競合状況、需要の潜在力、自社の立ち位置等々です。SWOT分析を使う会社も多いと思いますが、これから会社が進んでいくフィールドの客観的分析を行います。

4. 新販売計画

 どの数字を目標にするか、全てはここから始まります。具体的な収入計画を先3年を目処に作ります。5年という会社もあるでしょうが、変化の激しい昨今、3年がむしろ適正だと考えています。大枠の販売計画を作り、それを担保する商品別、顧客別、エリア別等のブレークダウンも詳細に作ります。

新商材・新市場プラン

 ここに事業形態によって、「新商品プラン」「新サービス計画」「新顧客開拓プラン」「海外事業強化」等の販売計画の根本をなすいわゆる商材の刷新計画が当然ながら盛り込まれます。会社を立て直すために一番重要な成長にどれだけ経営資源を投入するかの最優先ポイントです。

5. 固定費見直し

 業態によって色々経費が違うので一括りにしづらい部分ですが、開発費、設備投資費等はメーカーの成長戦略には不可欠な部分なのでケースバイケースです。しかしながら上記の販売計画で収入が明確になっているのでそれに合わせた見直しが必要です。

人件費の吟味

 一方どの会社にも共通なものが人件費です。ここがある意味「リストラ」と世間一般で言われている人員整理の部分で人の雇用がかかっているので一番切実な部分です。見直しと言っても全ての一般経費を見直した上でもう削るところがないとなって、いわゆる最後の砦の部分です。経費に占める割合が圧倒的に大きく且つ固定費ですので、社長も交え人事部と慎重に進める必要があります。

退職者への配慮

 退職者に関しては、退職金の算定基準支払い方法リファレンスレター等々、法令の遵守と訴訟対策も求められるため、弁護士との相談が必要になってきます。労務関係の弁護士費用が発生しますので経費に盛り込みます。

特別費用の見積もり

 上記の通り、開発費、設備投資費、人員整理費用等は、一時的に特別損失として処理すべきものが含まれます。構造改革には付きものですので別途まとめて社内稟議に織り込みます。

6. 損益分岐点の確認

 プランの全容がまとまったら、いくらの売上で当該事業がブレークイーブン、つまり固定費と粗利益が釣り合うのかという売上の歯止めポイントである損益分岐点を確認しましょう。損益分岐点は、販売進捗管理のガイドライン、また価格対応をする際の粗利率算定の重要な経営管理指標となります。ここでプランの実行可能性に就いて最終フィルターにかけます。

やり直しも厭わない

 人件費の見直しをする中で、やっぱり固定費の考え方がそもそも間違ってないかという事態に陥ることはままあります。その時は、また4. 5.に戻ってやり直しです。結局経営は人・モノ・金のバランスなので、これは崩れたバランスを取り戻す作業なのです。ここでしっかりと踏ん張りましょう。

7. 実行ロードマップの策定

 いつ迄に、どういう段取りで進めていくか、時間軸での管理を見える化するためには、上記プランの実行ロードマップを作ります。重要なのは開始のポイントと終息完了のポイントです。その間に成果進捗の確認ポイントも節目ごとに作ります。実行の前倒しが理想的ですが、仮に遅れても問題を引きずらないための指標となります。期限を区切って評価をしてのリバイバルプランです。

[2]. リカバリープランの社内稟議を通す

    このようにして出来上がった「リカバリープラン」は、社内での承認プロセスを経る必要があります。中身は、1️⃣事業改革ゴール、2️⃣現状分析と課題、3️⃣市場トレンド、4️⃣新販売計画5️⃣固定費見直し6️⃣損益分岐点の確認、7️⃣実行ロードマップの全項目で、全ての実行手順を網羅します。いざ蓋を開けてみるとプラン通りに行かないのがですので、不測の事態の可能性の示唆し。それを経営陣と共有して社内コンセンサス(「一回でうまく行かない事もあります」)をつくっておく事が非常に重要です。

1. 実行に際しての最重要プロセス

 この試行錯誤をやって置くことが今後起こり得る状況への最良の準備となり、経営陣ともうまくやっていく糧となります。特に人に関する事は、面談をする中で想定外の事が起こるケースが多いので経験者が居れば、聞き込みをしたり、実行メンバーに加えておくのが良いと考えられます。

2. 不測の事態への構え

 事業再建に至らないという最悪の事態の想定として、事業譲渡(売却)、事業終息、という不測の事態に備えたプランを場合によっては準備する必要があるケースもあると思います。一度に全てを進められませんが、検討チームとして準備しておくことも視野に入れます。

[3]リカバリープランの実行

1. 大義名分を明確にする

  いよいよプランの実行ですが、「大義名分」は必ず必要となります。つまり何故今回リストラするに至ったか、今後どの方向に導くのか、そのためにどんなリストラを行うのか。誰が聞いても「なるほど、仕方ないか」と思える納得性が必要です。社内的には当事者の納得のみならず、家族労働組合も納得いくものが必要です。社外的には監査法人株主への配慮も必要となってきます。基本的には1️⃣経営数値に基づいた合理性の説明、2️⃣会社としての決断の姿勢、3️⃣コンプライアンスに沿った公平性、等が入っているものとなります。

実行前に再チェック

 ところで「大義名分」は最初に来るもので、順番があべこべのような印象を受けるかもしれませんが、社内稟議が終了するまでは紆余曲折も十分あり得るので、実行の前に改めてまとめ直す事が必ず必要です。

2. 根回しは必要

 いくら「大義名分」があっても、人員整理等が伴うものは感情的な折合いが必要です。事前情報をキーマンと共有して置く事発表前の個別面談等、必要な根回しはあるものです。また根回しを行う事によって、「大義名分」を加筆修正することもあり得ます。これらの努力が心理的な予防措置となって、発表時の衝撃を和らげる事にも繋がります。

3. オープン且つフェアに実行する

  さてリストラ案を発表したら実行フェーズです。考えるステージは終わっていますので、くよくよ悩まずにプランしたシナリオを一気に進めることになります。大事な事はオープン且つフェアな態度で進める事です。最大の難関である組織再編に伴う人事異動、また人員整理は、一方的なコミュニケーションや考えの押し付けには十分注意して、たとえ話し合いが長期になってもこのスタンスを貫くことが大事だと思います。個人的な陳情は人事部と手分けしたり、争議は弁護士に任す等の割切りも大事になってきます。

4. 再決起でモラルを上げる

  リストラも終盤に入り、出る人への対応に目処がついたら、残る人を集めて再度「大義名分」を説いて再決起です。ここでしっかりとモチベーションを確保して組織内から不穏な空気を一切払拭しておく事が肝要です。ここでは「大義名分」を担保するものとして、具体的にリカバリープランの概要または全容を示す事で会社の誠意を伝え、社員の安心感を確保して、最終的には総意結集を行う絶好の場にします。これは遅れる事なく「間髪入れず」のタイミングが大事です。

リカバリープランは進捗確認が肝要

  新しい船出は大変なものです。人心掌握も兼ねて再生計画(リカバリープラン)の進捗を3ヶ月に1度位の頻度で確認をしましょう。1年続ければきっと新しい流れができているはずです。

 リカバリープランの実行は

1)事業総括を基に詳細プランの策定

2)社内稟議で承認しコンセンサスづくり

3)人心に配慮し大胆かつ慎重に進める

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