事業再建、経営再建を任されたら

経営

中小企業に於ける後継者問題、立ち行かなくなった事業の再建、突然襲いかかるかもしれない課題です。

【1】発端 ー 厳しいお題は突然やってくる

 本社のオーナーから「この会社を何とかして欲しい」と言われたらさてどうしましょうか。販売や利益を伸ばして儲かる様にするというのが一般的な考えでしょうが、会社の内容次第ではもうそれは叶わない状況かもしれません。既に赤字を垂れ流していましたので、必ずしも正攻法を求めているとは限らず、「売り先があればそれも手だよ」とも解釈できるし何とも難しいお題です。

 翻って昨今の後継者問題に悩む数々の企業のことを思うと、同じようなお題があちこちの会社、特に中小企業では出ているかもしれないなと思い、自分もそういう経験をした一人として筆を取ってみた次第です。

【2】事業再建の事例分析

 結論から言うと、この会社、精密機械のメーカーですが必要最低限の事業再建をして同業他社に事業譲渡することで生きながらえる道を見つけ、何とかオーナーのミッションを果たすことができました。「何とかなった」訳です

 事業規模は別として、この経験は一つの経営再建の事例と考えられます。以降、順を追って経緯を辿り、最終的には一般的に使える手法としてまとめてみました。

[1]事業再建は現場現物主義で一歩踏みだす

 この会社の責任者に公式に任命されてミッションスタートです。さてどうしようかと思案、お題の会社は、このように俎上に上がる会社だし、どうせ大した資料もないだろうから、まずは現場を見ようというのが大事な選択肢だと思いました。地理的に、日程的に、難しい事があってもスピードが重視される現代ではそうあるべきだと、これが私が最初に下した判断です。

 お恥ずかしながら、オーナーに「行ってこい!」と言われたのですけどね。でも自分もこれまでに現場現物主義の大事さを痛感していましたので、それが正しいと思い、従ったわけです。

[2]飛び込みで人間関係を構築

 お陰様で現場のメンバーにはまだ自分のミッションを明かす前に人間関係を作る事ができて、ちょっとしたスパイ気分であれこれ現場の様子に触れられたのは大きかったのかと思います。しかし全て出来上がった会社のオペレーションの継続発展の経験しかなかった自分には、会社の経営課題の根源を見抜くだけの事前準備が決定的に足りなかったなと後になって気づくことになります。

 忌憚なく質問をして回答を得られるのは実は「最初の訪問の時」というセオリーをすっかり失念していました。人は一旦警戒心が出るともう中々口は開かないものですからね。

[3]現場実務に浸り全容解明へ

 今後の再建プランを策定せねばと思うものの、会社は回っているので止められません。こう言う時、優秀な番頭さんがいれば参謀としてじっくり構えられますが、中小企業の場合は「全部自分でやる」が基本なのです。まずはプレイーングマネージャーとしてあらゆる書類や決裁事項に関与していきます。

 事前に理想として考えていたのは「全容を掌握して課題を見つけピンポイントで手を打っていく」ですが、現実はドットマトリックスのように無数に実務の経験値を打っていくうちに、ぼんやり全容が浮かび上がってくるという真逆の感じです。

[4]再建に向けた対策実行も赤字脱却できず

 再建プランならぬ、「会社は実はこうなってます」というのが出来上がったのは半年後、オーナーは「ようわかる様になった」と少し褒めてくれましたが、まだまだ道半ば。結局再建プランを作るためには、この会社の過去からの財務諸表の分析、特にBS関連の動き、簡単にいうと借入金の規模・頻度の分析が何より重要でした。またPL関連では市場トレンドの見極め、顧客の販売力・資金力の掌握が決めてになりました。そして最後のピースを埋める見えない社史を現場メンバーに改めて聞き込むのは結構難儀でした(最初に聞いておけばの部分です)。

 ようやく「何で会社がこうなったのか」という原因が分かり、「それを根治するための方法」という対策が見えてきます。具体的には商品改善案、販売チャネル政策、3ヵ年計画、資金計画といろいろまとめて、其の後実行に移していきましたが、結局2年経っても赤字体質を脱却できずでした(赤字額は減らしましたが)。流石に3年目は無いなと思ったのを覚えています。

[5]事業譲渡で最終決着

 その後も何度も再建プランを練り直し、最終的な選択肢として、1️⃣リストラしてダウンサイズし細々と事業継続する 2️⃣競合他社に事業譲渡を持ち掛ける という二つに行きつきました。この二つの施策の実行を巡って何度か行ったり来たりしている内に、ダウンサイズしてブレークイーブンした事業なら譲渡可能という相手が出てきました。3年目で諦めも出始めていた苦しい時期で一点の光明を見出した感じでした。

 そこから約半年掛かけて譲渡の前提となるリストラを断行して、数々のラッキーにも恵まれ、やっとの思いで自身の担当後初の黒字化を達成し、1年後に両社合意に漕ぎ着ける事ができました。

【3】事業再建、経営再建への指南(中小企業を想定)

 この経験を基に、事業再建、経営再建のプロセスをまとめて見ると次の様になります。

1. 事業の総括(現場経営の掌握)

  ますは「現状の正確な掌握」です。黒字なの赤字なの、改善中か現状維持か悪化中か、経営全体に与えるインパクトは、などであります。次に「何故こうなったのかの真因の追求」です。新製品が当たらず、競合他社に追い抜かれて、市場の潮目が変わった、など必ず原因があるはずです。

 販売・利益推移、商材・サービスの競争力、市場での競合状態、事業継続に必要なコスト(人員、事務所等)分析作業になります。これらを通して、最低でも完治の見込みのない重症なのか、手を講じれば何とかブレークイーブンに戻れるレベルなのかの判断が必要です

2. 人心掌握と後継人材の見極め

 事業は人なりですが、そもそも経営不振に陥る会社はリーダーシップの欠如と、人材の枯渇等の人の問題に直面しています。また人の心、つまりモチベーションが落ちています。再建の目処がつくならば、安定軌道に乗せるべくこの先5年なのか10年なのかある程度のスパンで事業継続を託し人心掌握のできるリーダーを任命、いなければ育成しましょう。

 再建チームの中から選出するのもありと思いますが、年齢的な問題があるケースも多々あると思われますので、外から引っ張って来ることも視野に入れて「後継人材の育成」に目処をつける必要があります。継続性の点でこれは重要です。

3. 再建プランの策定

 再建を実行するためには「処方箋づくり」が必要です。実行可能性が最も問われます。商材の強化であれば、新機能開発、仕入れ先の変更によるコストダウンなど、販路再編であれば新販路の提案、集中と選択による取引の見直し等が必要でしょう。利益確保のための事業のダウンサイズも選択肢として出てくるでしょう。

 ここで大事なのは、目標値(定量的なもの)目標達成時期を明確にすること。またそのためにどれだけ会社の経営資源を充てるのかも必要となります。オーナー企業であればオーナーの合意、一般企業であれば取締役のコンセンサスが必要となると思います。

4. バックアッププランの策定

事業譲渡の検討

 事業再建はうまく行かない場合がかなりの確率で起こり得ます。プランBは必要です。事業売却、事業譲渡の可能性を探ることも重要かと思います。この場合は役者が違うので担当チームの交代も必要になります。また事業内容に拠っては、自社運営ではダメだけれども独立運営ならやれそうと言うことでMBO(自社経営者への売却)も選択肢の一つとしてあると思います。それを決断するためにも、再建プラン策定時の「目標値と目標達成時期の設定」がやはり重要になります。この歯止めがあることで最悪の事態に至るリスクを最小限に留めます。

自主終息の覚悟

 再建を断念し事業売却も譲渡もMBOも成立しない場合は、最終手段として事業終息を自ら行う事になります。製品の販売終了後の保守業務の継続、提供サービス期間中のサポート継続等、販売をやめても事後処理が残ります。第三者に委託してしまうことも考えられますが、社会的責任が発生する場合もあるので慎重に検討しましょう。

5. 実行フェーズ(トライアンドエラー)

 再建プラン実行したからと言って必ずしもその通り進捗するとは限りません。課題ビジネスの再建は人のモチベーション低下等、不測の事態も起こり得る厳しいものです。定期的に進捗確認をして、結果が伴っていれば加速して成果を求める事になります。もし思わしくない結果であれば、傷口が広がらない内に、また1. の総括に戻り、3. のプランニングをやり直して再挑戦です。

 何度も失敗を繰り返しながらも成功に近づいていく粘り強い取り組みが必要です。一度決裁して決断したことを変えない頑固さと、臨機応変に間違いを認め変化に対応していく柔軟さが求められる最重要プロセスです。トライアンドエラーの精神で粘ります。

【4】七転八倒、七転八起、現実の受け入れ

 事業再建や経営再建は、新規の発足よりも多くの時間、労力、気力が必要とされます。特にメンタルな負担が大きいので、経験がものを言うと思います。大企業だとV字回復とかを強く求められのでしょうけど、中小企業だとむしろ完全回復よりも、現状維持か少しの挽回をすれば、後はゆっくりオクリビトになって終息させるケースも多いのかと思います。もちろん完全回復が夢ですが、最終的には現実を受け入れることになります。

事業再建は、

  1. 現状を正しく見極めて
  2. 人心掌握、人材確保を固め
  3. プランして粘り強く実行
  4. 現実結果の受け入れ

 これで成否が決まります。

 

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