後継人材の見つけ方

人事

人材育成の延長上に自分の後継者の育成という課題が出てきます。それは単なる交代要員ではなく自分自身の仕事観を引き継げる人という意味合いが込められています。前編の「人手不足の解消と人材育成をどうするか」の発展版として深掘りし、後継探しで困らないようにバックアップします。

後継人材の定義と見つけ方

 一つの大きな目標を成し遂げた。更に大きな成果に向かって挑戦したい。必ずしも組織責任者でなくとも一定の業績を上げた人は、それを盤石なものに築き上げたいと思うものです。時期が来た故の後任者ではなく、業績を引き継げる後継者をこの場合求めています。全く同じ素養の人間などいるはずもないので、誰か別の人となるわけですが、「自分の業績同等以上の事ができそうな人」というのが当該責任者またはリーダーの思い描く人材像なのでしょう。上司や人事に丸投げしても多分出てきそうにありません。当事者はもっとこの点を日頃から深掘りして的確に説明できるようにしておく必要があるというのがここでの主旨となります。

[1]後継人材に期待する要件 ー 後継要件5ベーシック

 後継人材の見える化はそのスペックを明確にすることです。人それぞれとは思いますが、共通項目と思われるものを以下に上げてみます。

1. 同じような環境、境遇の経験

 自身と同等のパフォーマンスを実現するにはやはり同じ経験が必要だと思うのは極自然なことです。この場合「職能」「業界」が大きなキーワードになると思います。開発、製造、営業、経理、人事等の職能が同じであること、IT、エレクトロニクス、食品、一次産業、素材等の業界経験が共有されていることとなります。

2. スピリッツ

 「気概」のようなものです。人の上に立ってリーダーシップを振るって仕事を進めるために必要な、ファイティングスピリッツ、ハングリースピリッツまたは「気合い」もそれに当たるかもしれません。一本筋が通っているかという点で、皆さん大事にされている部分と思います。

3. 行動原理

 「一を聞いて十を知る組織をつくる」で触れましたが、行動原理の理解は組織運営の肝とも言える部分です。自社のまた自部門の行動原理をマスターしているかは大きな要因だと思います。

4. 仕事観

 スピリッツ、行動原理と似てそうですが、自分のライフスタイルにおいて仕事をどう位置付けているかという意味合いです。昭和であれば「モーレツ仕事一徹」の一言で片付いたでしょうが、ワークライフバランス、働き方改革、の考え方があるように、世の中が多様化しており、ライフワーク、グローバル志向、時間に囚われない裁量主義、地域限定就労等様々です。これは当事者と同じものを期待するものではなく、後継として全く相容れない仕事観ではないことを最低限確認して知っておくためのものです。

5. マネジメントスキル

 自身はリーダーシップ、問題解決、人材育成と組織運営に長けていて足りない部分は、専門外の財務会計、新しい企画を生み出す戦略思考である。という風にスキル面での棚卸しを客観的にやってみると次の業績フェーズで何が一番求められるかが見えてきます。そこで例えば目標管理を徹底できるスキルが次の人には必要だと具体的に絞り込む事ができます。

[2]期待通りの後継人材は見つかるのか

 後継人材のスペックが明確になったとして、果たしてその通りとは行かなくともそれに近い人材は見つかるのでしょうか。現実的には社内人材を人事部が融通するとか、関係会社のコネや信頼できる筋からの推薦によるその時期に就任可能な候補者が現れます。その人材が文字通り上記スペックに沿った人材に必ずしもマッチしないことは極普通に起こり得ます。それではどうするか。今や上記スペックの洗い出しを終えて、つまり言い換えると自分自身の棚卸しが出来ている状態です。紹介された人材を、後継人材になり得るかの検分をするためのベースが出来ています。従って見つかるかではなく後継者を見つける作業を粛々と始めることになります。

[3]候補者の視点、切り口で引き継ぐ仕事を俯瞰してもらう

 自分自身は現在の仕事で十分成果を出すことができた。それは例えばエレクトロニクス業界の経験があり、ファイティングスピリッツを持ち、自社の行動原理に精通し、グローバル志向の仕事観で、リーダーシップのスキルに裏打ちされてのことです。さて候補者は期待通りにこの仕事を俯瞰しきれるでしょうか。実際にそれぞれのスペックを見抜くための質問を50問位用意して会話をスタートしましょう。候補者に全く同じ素養がなくとも、上記5点1️⃣業界経験、2️⃣スピリッツ、3️⃣行動原理、4️⃣仕事観、5️⃣マネジメントスキル、のエッセンスを違うフレーバーであっても持ち合わせていれば、必ず仕事の俯瞰、課題の分析はできるはずです。留意すべきは2️⃣スピリッツが感じられない、5️⃣マネジメントスキルが決定的に少ない等、抜け落ちているものがないかを見極めることです。

質問例(10個)
  1. あなたの居た業界のビジネスモデルの特徴と競合数社の市場シェアと自社の立ち位置は。
  2. 当該市場規模を具体的に金額で、またこの先10年の成長ポテンシャルはどうですか。
  3. あなたの精神面を支える座右の銘があれば教えてください。
  4. その座右の銘が実際のビジネスで活きた経験はありますか。
  5. 当社の営業戦略における営業社員の行動原理は何だと思われますか。
  6. 市場不良発生時の当社における顧客対応の行動原理は何だと思いますか。
  7. あなた自身のこれまでのビジネスライフにおける仕事観を聞かせてください。
  8. 会社が危機にある時、どのような仕事観で日々臨みますか、何か日頃の仕事観と変化するものはありますか。
  9. 仕事をマネージする上でのあなたの得意分野と言えるスキルは何ですか。
  10. 今後身に付けたいマネジメントスキルは何かありますか。

[4]ケーススタディーをやってみる

 仕事の俯瞰はできても、問題解決や意思決定ができるかどうか、これは実際に直面している営業課題や経営課題をケーススタディーとしてやらせてみましょう。意外にも自信がぶち当たっていた問題解決の糸口を易々と見つけ出してしまうかもしれません。そこまで行かずともスタディーの過程で、企画・構想力、実行力、戦略思考、労務知見といったマネジメントスキルは詳細に確認することができると思います。

事例
  1. パレット分析でA商材のトップ10顧客の占める割合が25%で平均よりかなり低いのが現状。当該構成比を40%に持ち上げたいがどのような対応策を講じますか。
  2. 全社の粗利率を現状より5.0%上げて改善し、販管費率を3.0%下げて営業利益拡大を目指しますが、それぞれにおいて1年以内に成果を出すための具体的な対応を教えてください。

[5]候補者が確定すればOJT – OJT_day_30

 社内人材であればスペックの整合確認は社歴の中でも行われており実際はスムーズな継承が期待されますが、中小企業であれば社外人材の登用のケースも十分想定されるので、行動原理のような継承の難しいスペックはOJTを行って、精度とスピード感をサポートするのが効果的だと思われます。またOJTの名目で実際には試用期間とする慎重な手立てを講じることも可能です。

事例
  1. OJT期間: 30日
  2. 目的:社内行動原理の習得
  3. 取組みテーマ:・社長決裁事案の決裁プロセスへの関与 ・顧客クレーム対応プロセスへの関与

後継人材の育成サイクルをつくる

 後継人材の育成を怠った結果、また不運にも人材が枯渇した結果、「どこかで見つけざるを得ない」という事態に陥っている中小企業が多いのが現実です。実際、内部でなく外部調達のケースが多いのではないでしょうか。ゴーイングコンサーンの基本に立ち返れば、まず内部に育成サイクルを絶やさない努力が必要です。また外部調達でも対応できるOJTの仕組み、調達先の拡充等で人材の流れが澱まない取組みが必須です。人のマネージは職場のリーダーの仕事の50%と言っても過言ではありません。

後継人材を見つけるには、

  1. 期待する要件を明確にする
  2. 候補者から後継人材を見つける作業を粛々と行う
  3. OJTを実施

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