日本円をどういう物差しで見ればいいのか。高度経済成長を経験した高齢世代から、失われた30年を生きている現役中堅世代、強い日本の復興に期待するZ世代まで、まるで違ったメジャーで日本円の動きを捉えているんではないかと思います。最近リタイアしたばかりの自身の目から見た円について語ります。
円のレートは国力の鏡
本日の円レートは1ドル158円、円安と言われています。158円あれば日本のコンビニでミネラルウオーターのペットボトルが買えますが、アメリカで1ドルではコンビニで水は買えないケースが多いです、1.5ドル位はします。もし1ドル100円だったら、158円は1.58ドルなのでアメリカでも水が買えて円は価値がある、円高となります。日米の物価の差もあるので通貨差を理解する一例です。
話は変わって、明治時代の金本位制の頃、1ドルは2円でした。その後金本位制を離脱して1ドル3.5円になりますが、円はメチャメチャ強かったのです。日本が戦争に勝っていた頃です。しかし第二次世界大戦で敗戦して経済が崩壊して、1ドル360円の固定レートになりました。その後高度経済成長を経て1973年に変動相場制に移行して1ドル240円等の変動レートになりました。1985年のプラザ合意で輸出で儲けすぎた日本が叩かれてわずか1年で1ドル150円に、その後79円まで行ってまた戻って長らく110円当たりで安定しました。そしてコロナを契機に今、ここ3年位で150円まで円安になってきました。
ずーっと円は強かったので(敗戦からプラザ合意まで除いて)、日本経済つまり国力が強かったと言えるでしょう。敗戦からプラザ合意までは、経済(輸出)が強いのにレートが安く抑えられていた時期です。従って輸出でたくさん儲けた結果、日本の対外純資産(日本の世界に貸しているお金)は3.5兆ドルで世界一でした (2024年にドイツに抜かれた)。
ところがここ数年の円安は少しフェーズが変わってきています。製造業の圧倒的優位で国力を維持してきましたが、AIやDXの流れで日本がこれからはこの分野で稼いでいくと言う確たる中核部分が明確でなく、経済の国際競争力がなくなってきています。対外純資産も少しつづ食い潰しの流れです。つまり長期円安の流れに入っているという見方が強いのです。従ってまさに日本の国力が真に問われる時代に入ってきています。高市政権が「Japan is back!」と言っているのは、マジで言っているのです。
円安は善か悪か、円安と円高論
円安だと輸入コストが上がって物価高騰に繋がる。海外旅行は高くて行けない等、負の側面がマスコミで取り上げられがちです。つまり円安は良くない。一方1985年のプラザ合意から2020年頃まで「円安はダメ!強すぎる日本はダメ!」と言われ続けた35年にも渡る歴史からすると、「日本は円安でも良いですよ、それも長期で」と言われている今はむしろ「いいんですね、では円安でいきますよ」と言える大チャンスとも捉えられます。もっと円安がいいのだという報道もあって良いのではと思います。
しかしこれをチャンスと捉えている人はかなり少ないと思います。円安奨励のはずの輸出企業でも事情は複雑です。円高回避のためにここ30年は、事業の海外展開でサプライチェーンがかなり変わっています。製造業を日本回帰すれば確かに円安メリットはありますが、部品の購入は結局海外からで円安は部品のコスト高になリます。つまり日本全体が部品から全て内製できる輸出国家にならない限り諸手を挙げての円安メリットはそんなにないと考えるからです。なのでなかなか大きな変化の流れになっていきません。円安がチャンスだと思える人の数、円安派がもっと増えてくるとまた違う流れが出てくると思います。
ビジネスモデル改革の大号令が必要
元々日本は資源がないので、資源は輸入、完成品に付加価値をつけて輸出、と言うビジネスモデルで敗戦後の経済危機をむしろ高度経済成長に変えてきました。米国の安全保障の傘の下での特殊な優位性があったことは否めませんが、それでも富国強兵ならぬ富国強経の明確なビジネスモデルで立ち上がってきました。今回の円安はフェーズチェンジに入っているので、待っていても円高に戻りそうにありません。であれば、長期円安下でのビジネスモデル改革の大号令が今こそ必要な時だと思います。「製造業回帰」は威勢がいいですが、上記したようなサプライチェーンの問題もあり簡単ではありません。結局「日本でしかつくれない付加価値は何か」を明確にした大号令が今こそ必要です。
変わりつつある国民意識
自民党が先の総選挙で大勝して、高市政権の打ち出す戦略17分野は大きな試金石です。高度経済成長期と違うのは、米国による安全保障の絶対保護がないことです。戦う力無くして国際経済競争力は持てないと言うことです。高度経済成長の当時がエコノミックアニマルと言われた経済特化の時代であれば、現代はやはり政治と経済のバランスが取れないとやっていけない時代です。現代のビジネスマンは経済一本ではやっていけないと感じているはずです。バブルの頃は「政治は頼りないけど日本は経済が盤石なので経済がしっかりしていれば国を引っ張っていける!」とビジネスマンは本当に思っていました。ある意味懐かしい時代です。
しかし上述した戦略17分野は、1️⃣経済安全保障、2️⃣次世代技術、3️⃣国力・文化、と言う目的が明快で「供給力国家」というキーワードが出てきています。この流れの中で、AI半導体、海洋資源、防衛産業等がハイライトされています。あれだけ動かなかった株価が政権交代後には日の出の勢いです。南鳥島のレアアース開発等のニュースも今までになかったフェーズチェンジを感じさせる流れだと思います。
選挙結果を全ての判断基準にはしませんが、これだけの与党大勝の結果が出たのは、何かが変わっていて、それに応じて国民の意識も変化しているのだと感じています。
円安メリットに馴染む
1985年のプラザ合意当時以降しばらくは、円高が国難でその甚大なる悪影響振りが報じられ、国民意識としてもなんとか円高に立ち向かわねばならぬという雰囲気が充満していました。円高メリットもあったのに、それに適応していくには時間がかかっています。内需の拡大(結果バブルとなりましたが)、製造業の海外移転、100均など安い輸入品の増加、海外旅行のブーム等々を経て気がつくと円高を受け入れるようになっていました。これからは円安メリットに慣れていく、メリットを突き詰めると言うことが大事なんだと思います。グローバルで勝ちゲームのできる新しい付加価値の輸出、製造業の国内回帰、国産品への拘り、地方の活性化、いろいろやる事はあると思います。そのうち円安でも円高でもなんでも来いの日本になればと思います。

今のアグリライフは、円安や円高には左右されにくい生産活動です。地場にあるものを使い肥料も自然に出てくる米糠、籾殻等が中心です。しかしながら種子や農業器具、それを動かすガソリンは間違いなく影響を受けていて無縁ではいられません。それを上回る付加価値をどうすれば作れるのか自問自答の毎日ですね。


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